名金線(名古屋駅−鳩ヶ谷) 
〜合掌造りの郷へ〜

2002.9.4 乗車(2002.9.30を以て廃止)

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名金線
2002.9.4 長良川SAにて撮影
    2002年9月4日、私は「ムーンライトながら」
    の車中で眼を覚ました。朝日がとても眩しく、
    本日も良い天気になりそうだ。名古屋着6時
    5分、名金線<特急白川郷>の発車までま
    だ2時間近くあるので、とりあえず洗面所で
    顔を洗うことにする。JRハイウェイバス乗り
    場の隅にある切符売り場で鳩ヶ谷までの切
    符を買う。\4,760円也、かなり高い。まだま
    だ時間があるので、狭い待合室で仮眠しよ
    うと思う。その間にも、「ドリーム名古屋」号
    などが続々と到着し、乗客の波が途切れる
    ことはない。発車時刻10分前、突っ込み型の
    乗り場に小振りなハイデッカーバスが到着。
鳩ヶ谷
2002.9.4 鳩ヶ谷にて撮影
白川郷を望む
2002.9.4 萩町展望台にて撮影



      手元にある資料を見ると、このバスはかつて貸切車として使用されていたサロンカー仕様の
      車両である。運転手が先ほど購入した切符を検札し、私はバスに乗り込む。運賃箱を後付
      けしたようで、乗降に少し手間が掛かりそうなのが心配だ。名古屋駅発車時点で乗客は3
      名、私以外の2名は用務客であろう。突っ込み型の乗り場なので、発車早々誘導員の指示
      でバックする。名古屋駅を出ると東海道本線に沿って北上し、国道22号線に入り新名西橋
      を渡る。目の前がパッと開ける、私の場合、このような時に都会の喧騒を忘れ旅情に浸るこ
      とが多い。ロッドシフトのこのバス、ギアの入りが悪い様でしばしば「ガゴッ」と言う音が出る
      のが少々不安(実際、最終運行日の9月30日は故障の為に違うバスが代走したらしい)。
      国道22号線をひたすら北上し、一宮木曽川ICから東海北陸自動車に入る。あまり交通量
      が無く快適な高速クルージングを味わう。対向車線を「岐阜駅」行きの<特急白川郷>が走
      り抜けて行く。現在は「名古屋」・「岐阜」両系統に分割された名金線だが、かつて東海北陸
      自動車道が開通していなかった頃は名古屋駅から岐阜駅を経由し美濃白鳥に向かっていた。
      バスは長良川SAで5分間休憩し、運転手はハンマーを使い念入りに足回りのチェックをする。


   長良川SAを発車すると東海北陸自動車道は
   対面通行に成り、上り坂が連続する山岳路線
   の雰囲気を呈する。郡上八幡ICを降り郡上八
   幡駅に立ち寄るが乗降は無し。町の中心部か
   ら離れているので、人通りもほとんど無く寂し
   い限りだ。ここで時間調整し、運転手は携帯
   電話で美濃白鳥駅への到着時間を美濃白鳥
   営業所に伝える。ちなみに「岐阜」系統は郡
   上八幡駅まで入らず、「郡上八幡IC」バス停
   で客扱いを行なっていた。バスは再び東海北
   陸自動車道に戻り、一路美濃白鳥に向かう。
   白鳥ICを降り、感じの良い古びた町並みに入
   ると美濃白鳥駅はもうすぐそこである。
コスモスと合掌造り
2002.9.4 白川郷合掌集落にて撮影
バス停と合掌集落
2002.9.4 白川郷にて撮影
   美濃白鳥駅で名古屋からの乗客2名が下車
   し、代わりに地元のご婦人達や観光客が乗
   り込んで来る。また、運転手も名古屋営業所
   の方から美濃白鳥営業所の方に交代する。
   私が訪れた時は白鳥大橋が工事中のため、
   来た道を少し戻り国道156号線に入った。こ
   こからは一般便になるので乗り降りが繰り返
   され、前谷や鮎走では国道を外れて集落の
   中まで入って行く。高鷲村の中心部にある「正
   ヶ洞」バス停も、国道を外れた東海北陸自動
   車道高鷲ICへのアクセス道路の入口傍にあ
   り、国鉄バスを代替した高鷲村営バスもここ
   が起点である。バスは正ヶ洞を出発すると再
   び国道を走り始める。



      バスはヘアピンカーブを抜け、蛭ヶ野高原に駆け上がる。ここには長良川と荘川の分水嶺が
      あり、太平洋と日本海の境と言っても良いだろう。初夏は水芭蕉、冬はスキーで賑わう所で
      もある。「蛭ヶ野新開地」と言うバス停があるが、開業以来ずっと‘新開地’を名乗っているの
      は奇妙であり滑稽である。バスは牧戸に到着し5分間休憩する。ここは数少なくなったバス
      駅であり駅員さんが切符を販売していた。この地は国道156号線と国道158号線が合流す
      る交通の要衛であり、高山からも濃飛乗合自動車が運行されていて乗り継ぐことができた。
      牧戸を発車してしばらくすると車窓に御母衣湖が飛び込んでくる。御母衣湖は昭和35年御
      母衣ダムの完成によってできた人造湖で、230戸4つの集落が湖底に沈んだそうだ。御母
      衣湖のほとりには二本の桜の老木があり、これが荘川桜である。現在は電源開発株式会社
      御母衣発電所の職員の方々が世話をしているそうだ(最寄停留所は飛騨中野)。この荘川
      桜の移植を見て感動し太平洋と日本海を桜で繋ごうとしたのが、名金線で車掌をなされてい
      た佐藤良治さんその人である。佐藤さんの功績は小説化や映画化されたのでご存知の方も
      多いだろう。


   バスは御母衣湖沿いの国道を進むが、結構
   狭いトンネルが連続する。そのためトンネル
   に入る前にバスは減速し、クラクションを鳴ら
   し対向車の注意を喚起する。御母衣ダムの
   堰堤を回りこむように坂を下ると平瀬の集落
   に入る。ここは白山の岐阜県側の登山口で
   あり、天然温泉がわいている。また木造一階
   四層の合掌家屋である旧遠山家民俗館(国
   重文)もここにある。平瀬を出ると白川郷はす
   ぐである。普段は合掌家屋に挟まれた白川
   郷の中心部を走るのだが、この日は集落内
   の下水道工事のため、バイパスを経由し「萩
   町」バス停に到着した。ここで美濃白鳥から
   の観光客は私以外全員下車する。
平瀬バス停
2002.9.4 平瀬集落にて撮影
名金線サボ
2002.9.4 鳩ヶ谷にて撮影
    終点の鳩ヶ谷まで乗り通したのは私一人だ
    け。「鳩ヶ谷」バス停は白川村役場の目の
    前にあり、白川郷とはうってかわって静寂だ
    けが支配している。バスが来た道を10分程
    戻ると白川郷の中心部で、ここには観光客
    が大勢いて大変賑やかだ。白川郷が一望
    できる萩町展望台まで坂をエッチラオッチラ
    と登る。その甲斐あり絶景を望むことができ
    たが、背中から汗が吹き出る。合掌集落内
    にバス停があったが、もうここにつばめのバ
    スが来ることは無い。なぜなら前述の下水
    道工事が9月いっぱいまでかかるからだ。
    その後も白川郷を散策し、名古屋行きの
    特急白川郷>
で平瀬温泉まで引き返す。
   鳩ヶ谷発最終便に乗るため今度は鳩ヶ谷に引
   き返す。バスを待っていると、運悪く雨が降り
   始めた。やって来たバスは、今朝すれ違った
   「岐阜」系統の<特急白川郷>の折り返し便
   である。車内にはお客の姿は無く、運転手と
   「廃止の噂を聞いて乗りに来た」とか「桜の時
   期は大変混雑する」などの話が自然に始まる。
   その間も雨は降り続いたが、バスは水しぶき
   をあげて疾走して行く。バスが鳩ヶ谷に到着し
   ても雨は降り続き、まるで天が名金線の廃止
   を悲しんでいるようだ。出発時間になり、最終
   バスはホーンを鳴らし白川郷を後にする。牧戸
   に着くと雨はいつの間にか止んでいた。
牧戸
2002.9.4 牧戸駅にて撮影
名金線切符 名金線の切符である。

長良川鉄道美濃白鳥駅の
券売機で発売していた。

ちなみに、これは最も安い金額の
切符で記念に購入したものである。

<JR東海バス 名金線時刻表> 2002.7.1現在

      特急   運賃 停留所名 運賃 運賃   特急      
830 1215 1410 1550 鳩ヶ谷 4760 2470 1031 1227 1531 1956
833 1218 1413 1553 160 萩町 4760 2470 1028 1224 1528 1953
853 1238 1433 1613 690 平瀬 4390 2040 1008 1204 1508 1933
855 1240 1435 1615 760 白山登山口 4340 1990 1006 1202 1506 1931
903 1248 1443 1623 950 御母衣ダム 4220 1840 958 1154 1458 1923
700 927 1312 1507 1647 1430 牧戸 3850 1410 937 1133 1437 1734 1902
714 941 1326 1521 1701 1670 蛭ヶ野高原 3590 1080 920 1116 1420 1720 1845
721 948 1333 1528 1708 1880 大日岳スキー場口 3460 900 910 1106 1410 1710 1835
734 1001 1346 1510 1541 1721 2080 正ヶ洞 3280 640 900 1056 1400 1505 1700 1825
800 1021 1406 1530 1606 1741 2470 美濃白鳥駅 3030 840 1036 1340 1445 1640 1805
1634 2600 郡上八幡駅前 2580 760 1003 |
825 | 2600 高速郡上八幡 2580 760 | 1305
930 | 3930 岐阜駅 1270 1800 | 1200
  1817 4760 名古屋駅 3030 820  
特急特急<白川郷>   斜字:4月20日〜9月30日運転    休日・第2・4土曜2003年1月1日〜3日運休
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