手元にある資料を見ると、このバスはかつて貸切車として使用されていたサロンカー仕様の
車両である。運転手が先ほど購入した切符を検札し、私はバスに乗り込む。運賃箱を後付
けしたようで、乗降に少し手間が掛かりそうなのが心配だ。名古屋駅発車時点で乗客は3
名、私以外の2名は用務客であろう。突っ込み型の乗り場なので、発車早々誘導員の指示
でバックする。名古屋駅を出ると東海道本線に沿って北上し、国道22号線に入り新名西橋
を渡る。目の前がパッと開ける、私の場合、このような時に都会の喧騒を忘れ旅情に浸るこ
とが多い。ロッドシフトのこのバス、ギアの入りが悪い様でしばしば「ガゴッ」と言う音が出る
のが少々不安(実際、最終運行日の9月30日は故障の為に違うバスが代走したらしい)。
国道22号線をひたすら北上し、一宮木曽川ICから東海北陸自動車に入る。あまり交通量
が無く快適な高速クルージングを味わう。対向車線を「岐阜駅」行きの
<特急白川郷>が走
り抜けて行く。現在は「名古屋」・「岐阜」両系統に分割された名金線だが、かつて東海北陸
自動車道が開通していなかった頃は名古屋駅から岐阜駅を経由し美濃白鳥に向かっていた。
バスは長良川SAで5分間休憩し、運転手はハンマーを使い念入りに足回りのチェックをする。